冷酷姫に溺れて。

ぶつかったのは入井くんだった。

私は我慢できず、泣き出してしまった。

「……くっ、うぐっ…っ」

「霜月…さん?」

入井くんは私を抱き寄せた。

「よかったら、ここで泣きなよ。
霜月さんだってバレないようにするから」

私は入井くんにしがみついた。

そしたら、さらに涙が溢れてきて。

ついに大泣きしてしまった。

入井くんは何も言わず、ただ背中をさすってくれる。

その手はとても温かく、私の冷えた心を温めてくれた。



泣き止んだ頃には下校時刻がとっくに過ぎていて、家に帰れなくなっていた。

なぜかと言うと、私の家は山奥にあるため暗くなると家までの道が分からなくなる。

「……入井くん、図々しいのは分かってるけど、家に泊めてくれないかな?」

「ええ!?」

愛の家でもいいけど、今から魔界に行くのは時間がかかるし。

今は入井くんしか頼れなかった。

「いいけど、今日は俺しかいないんだよね」

え。

いきなり二人きり!?