冷酷姫に溺れて。


「おかえり……お兄ちゃん?」

「どうしたんですか!?そんなに濡れて!」

家に帰ると咲奈と桜大はゲームの通信をしていた。

「あ、ちょっと傘忘れて」

「風邪引きますから、すぐ着替えてくださいよ?」

「おう」

嘘だ。

本当は傘を持ってたけど、なんとなく濡れたかった。

泣き顔なんて見られたくないから、濡れるしか隠す方法がなかった。


シャワーを浴びることにした。

今日はそのまま寝るか。

飯を食う気分にもならねぇし。

シャワーのお湯でさえ、痛く身体に刺さる。

今の俺は、何をしても霜月さんのことで頭がいっぱいだ。

だから、忘れたい。

今だけは忘れさせて欲しい。

それなのに、なぜ考えてしまうんだろう。