失礼します、と頭を下げて、専務室を出ながら、花鈴は思っていた。
あの人、私以外の人ともラブラブになれそうにない、と。
イケメンで御曹司なのに、なにかが残念な人だ。
主に恋愛面で、と思ったとき、目が合った。
専務室の扉の前、詩織が手に書類を持ったまま、逃亡をはかろうとして、失敗していた。
花鈴と目が合ったまま、立ち止まっている。
今、通りかかったフリをして、お疲れ様~とでも言えばよかったものを、と思いながら、花鈴は訊いた。
「……堀口さん、いつからそこに居ましたか」
静かに言ったつもりだったのだが、何故か、怯えたように詩織は首を振る。
ずっと居たわけじゃない、と言いたいようだ。



