ウエディングドレスを着せてやろう

 花鈴は迷って、口角を上げかけたまま止まっていたが、光一はそもそも、こちらを見ておらず、

「ああ、シュークリームは甘すぎず、さっぱりした感じで美味しかったそうだ。
 田畑が言っていた」
と何故か突然、シュークリームの報告をしてきた。

「監査役に会ったら、そう言って礼を言っておけ。
 今度同じのを食べさせてやるから」

 どうもシュークリームを持ってこなかったことを悪いと思っているようだった。

 いや、そこは別にいいんですが、と思う花鈴に、光一は、

「ところで、お前は俺と居るとき、ずいぶんよそよそしいようだが」
と叱るような口調で言ってくる。

「すみません」

 っていうか、上司と部下ですからね。
 新人だし、これで普通なのでは、と思いながら、光一の前に立っていると、光一は花鈴を見つめ、言ってきた。

「このままでは、役員たちに疑われる。
 そこで、一、二ヶ月の間、雰囲気だけでもラブラブになってみようと思うんだが」

 まるで、会議で決まったことを報告してくるかのような口調だ。

「……いやあの、それって、なろうと思ってなれるものなんですか?」

 いや、知らないが、と他人事(ひとごと)のように光一は言う。