「ねえ、あんた、今日、ご飯食べに行かない?」
「えっ?
行きません」
お昼過ぎ、廊下で通りすがりに詩織に誘われた花鈴は反射的に断ってしまっていた。
誰になにを言ったか気づいて、足を止め、振り返ると、詩織は腕を組み、こちらを睨んでいる。
「あんた、今、即行、断ったわね~」
「いやいやいや~。
すみません。
なにも考えてなかったので、反射で」
と苦笑いしながら言って、
「……余計悪いわよ」
と言われてしまった。
「あんた、たぶん、無意識のうちに、
『面倒くさい人に誘われたなあ。
食べに行っても、緊張するだけなんだろうなあ』
とか思ってたんでしょ」
……相変わらず、自己分析能力のすごい人だな、と花鈴は思っていた。
さすが常務の秘書なだけのことはある、とちょっと感心する。
とりあえず、そこまでの思考の流れは伏せておいて、
「堀口さんは秘書の鑑のような人ですね」
とだけ言ってみたのだが、
「……いろいろ呑み込んだつもりでしょうけど、なにも呑み込めてないからね」
と言われてしまった。



