ウエディングドレスを着せてやろう

 一瞬、男の腕をつかんでいる花鈴を見たあとで、光一は、
安芸(あき)さん」
と彼を呼び、自動販売機の前に来る。

 マジマジとその古い自動販売機を見つめ、
「こんなところに自販機があったのか」
と言い出した。

「……お前、本当に興味のないものは目に入らない奴だね」

 安芸と呼ばれた男がそう言うと、光一は、
「安芸さん、何故、こんなところに」
と彼に訊く。

「いやいや、近くに仕事で来たから、寄っただけ」

 どうやら、光一の親戚らしい安芸というこの男はグループ会社の社長らしい。

「連休に妹が帰ってくるから、お前と会わせようかと思って、その話に」
と安芸が言った瞬間、光一がゾクッと来たような顔をする。

「いや、連休も忙しいんで」
と光一は言い訳して断ろうとしていた。