ウエディングドレスを着せてやろう

「わかりました。
 お世話になりました」
と頭を下げると、うん、と言われる

 いや待て、と頭を下げたまま花鈴は思っていた。

 よく考えたら、私がお世話したのでは?

 だが、此処で文句を言えるような立場ではないし、そっと去るのが一番な気がしていた。

 ……でも、そうか。
 これで、もうこの人とは、なんの関係もなくなるのか、と思いながら、去る前にもう一度、無駄に整っている光一の顔を眺めてみた。

 まあ、かなりのイケメンではあるが、整いすぎてるせいか、表情があまりわからないし。

 一緒に居て、疲れそうだしな、ととりあえず、光一のマイナス面を考えてみたのは、別に好きでもないのに、ちょっとフラれたような雰囲気になってしまったからだろうか。

 とりあえず、
「どうした?」
と光一に訊かれる程度にはその顔を感慨深く見つめてしまっていたらしい。

「いえいえ。
 写真の中だけのこととはいえ、結婚していたのに、これで、赤の他人になるんだなあと思って、しみじみしてました」
と思ったままを答えて、

「なんで赤の他人になるんだ。
 上司と部下だろ」
と言われてしまう。

 ……そうでしたね、と思いながら、失礼します~と花鈴は専務室を出た。