ウエディングドレスを着せてやろう

「それ、止まらなくなるんですよね~」
と花鈴が言うと、

「甘辛のビスケットは罠よねっ」
と詩織も言う。

 花鈴お気に入りの塩がまぶしてある甘いビスケットだった。

 この手の甘辛のビスケットは何処のメーカーのが美味しいとか、コスパがいいとかいう話を散々したあとで、詩織は、ハッと我に返り、

「……サボってんじゃないわよ。
 ご馳走さま」
と軽く脅しながら、礼を言ってきた。

 そのまま出ていきかけたが、戻ってくる。

 詩織はロッカーの鏡で化粧を直すと、
「お疲れ様」
と言ってまた出て行った。

 ……化粧を直しに来たんだったのか。

 本来の目的を忘れて帰りかけていたようだ、と思いながら、花鈴は詩織の消えたロッカー室の扉を眺める。

 職場の先輩って、大学の先輩とかと違って緊張感あるな~。

 中学のときの先輩たちの雰囲気が一番似てるかも、と思いながら、花鈴も急いで化粧を直し、頑張るな、と上司に言われた仕事に戻った。