ウエディングドレスを着せてやろう

「当時は若すぎたし、貴方には、いいおうちからの縁談もおありでしょうから、お父様にも反対されたかもしれませんが。

 彼女が貴方の秘書として、立派に貴方を支えていたら、きっとお父様もお二人の結婚を認めてくださると思いますよ」

 ニコニコと見つめられ、いつもはホッとするなと思う監査役の微笑みに胸を締め付けられる感じがした。

 幼い頃、親に嘘ついていて、ごめんなさい、と思ったときと同じ感じだ。

「あ、ありがとうございます」
と頭を下げたとき、役員室のあるフロアに着いた。

 先に監査役に降りてもらい、自分も降りる。

 ちょうど監査役が部屋に入った頃、
「あ、おはようございますー」
と給湯室から、いつも呑気に見える、道で拾った仮の嫁が出てきた。

「おい、お前。
 絶対、しっかりした立派な秘書になって、俺を支えたりするなよ」

 はあ? と言って花鈴は(いぶか)しげに自分を見上げていた。