「事情があって、表沙汰にできないって、彼女が若すぎるからだったんですね」
朝、エレベーターに乗り込み、階数ボタンを押した光一は、いきなりした声に、ひっ、と身をすくめた。
振り返ると、監査役がエレベーターの隅に立っている。
確かに慌てて乗ったので、よく見てはいなかったのだが、なんの気配もしなかったから、誰も乗っていないと思っていたのに。
光一はガラにもなく、少し慌てながら、
「え、あ、はい」
と適当な返事をしてしまう。
「貴方が入社してすぐの頃に結婚式の写真を見せられたと杉田常務に聞かされましたよ。
ってことは、その頃、あのお嬢さんはまだ高校生」
わざわざ計算してみたのですか。
暇なのですか、監査役……。
「いやいや。
貴方にそんな情熱的なところがあったとは」
と監査役は微笑ましげな目で光一を見つめてくる。



