「私たちと食事じゃ気疲れするでしょ。
二人で行ってきなさい」
と満里奈に言われた。
その前に屋敷の中を案内してくれると光一が言うので、一緒に見て回った。
子どもの頃、光一が使っていた部屋。
中学生のとき使っていた部屋。
高校生のときに使っていた部屋。
「……ちょっと待ってください。
何故、専務が、かつて使っていた部屋がそのまま残っているんですか」
「母が思い出にとっておけと言うんだよ」
「確かに、今にも、ただいまって中学生のときの専務や、高校生のときの専務が帰ってきそうな感じではありますが……」
満里奈の息子への愛を感じ、ちょっと微笑ましい。
ちゃんと換気されている窓からは、涼やかな風が入り込み、レースのカーテンが揺れていた。
……が。
幾らとっておきたくとも、庶民にはできない行為だ。
でも、そうやって大事にされて育ってきた息子さんと結婚するのはなんだか申し訳ない気がするな、と思いながら、花鈴は光一を見上げた。



