ウエディングドレスを着せてやろう

 


 ようやく家の駐車場に車を乗り入れた花鈴は、

 今日も一日ご苦労様、とまだ、たいした仕事もしていないのだが、明日も頑張るために、自分をねぎらってみた。

 誰もねぎらってくれないからだ。

 ちょうど入社前に近所に住む兄のところに子どもが産まれたので、家でも、なんだかほったらかされている。

 よし、冷えたご飯をチンして、数種類買っておいたチューハイで一杯。

 誰かに全部呑まれてなきゃだけど、と思ったとき、スマホが鳴った。

 車を降りながら、はいはい、と適当な返事をして出る。

 学生時代の友人、仙子(せんこ)だった。

「あんた、今、何処よ。
 本屋で、新崎(にいざき)たちと出会ったのよ。

 今から呑むから来なさいよ」
と言われたときにはもう玄関のドアを開けていた。

 トイレから出てきたところだったのか、ちょうど玄関を通りかかった母親と目が合う。

「あら、おかえり。
 遅かったじゃない」
と言われたのだが、花鈴はスマホを手にしたまま後退していった。

「あ、ごめん。
 やっぱ、今から出かける~」

「あんた、なにしに帰ってきたのっ」
と言われながら、扉を閉めた。