ウエディングドレスを着せてやろう

「しゃべったぞっ、光一ってっ」
と智也が叫ぶ。

 いや、『こ』しか言ってない気がするんですが、お兄ちゃん。

「ほんとね。
 確かに今、光一って言ったわ」
といつも冷静な誠子が言う。

 いやいや、お義姉さん。
 『こ』ふしゅふしゅふしゅ……とあとはなにか空気が抜けるようでしたよ、と花鈴は思っていたが、

「待って!
 ビデオ取りに帰ってくる!」
といきなり誠子が晴樹を抱いて、立ち上がった。

「スマホでいいだろ!」
と言う智也に、

「だって、このときのために買ったのよっ!」

 いつもはおとなしい誠子がそう強く主張してくるので、智也は慌てて、
「お前はハルを見てろ!
 俺が取ってくる!」
と言って、近所にある自宅に走って帰っていった。

 子どもが初めてしゃべった場面を……

 いや、そのようには聞こえなかったんだが。

 ビデオに収めようとする二人の姿が微笑ましく、花鈴は、光一と顔を見合わせて笑う。

「いいご夫婦だな」

 はい、と花鈴は頷いた。