ウエディングドレスを着せてやろう

 だが、そこでさすがに正気に戻った安芸は、
「……ごめん。
 危うく取り乱すところだった」
と言ってくる。

 いや、もうかなり取り乱してましたけど、と思いながらも言わなかった。

「お兄さんが言うように、僕は、自分が思ってるより君が好きなのかも。

 ごめんね、おやすみ」
と言って、安芸は離れた場所にとめていた車へと向かう。

「お、おやすみなさい」

 暗がりを歩いていく安芸を見送りながら、ホッとしていると、安芸は車のところで顔を上げて振り返り、また、

「おやすみ」
と言ってきた。

 びくりとしてしまう。

「お、おやすみなさい……」

 なんだろう。
 おやすみが飛び道具的に怖いんだが……と思いながら、今度こそ帰っていく安芸を見送った。