ウエディングドレスを着せてやろう

 


 誰も居ないので、どうぞって、なんかあれだな~と光一の前を歩きながら花鈴は思う。

 人気のない場所に誘っているかのようだ。

 いや単に、他の人はもう居ないので、気兼ねなさらずにという意味だったんだが、専務はどう受け取っただろう。

 専務っ、襲いませんからっ!

 などと心の中ではいろいろと考えていたのだが、顔には出さないようにした。

 ……いや、出ていなかったかどうかは定かではないが。

「……今日ももふもふしてたのか」
と後ろから光一が訊いてきた。

 なんか不思議な日本語だな、と思いながら、いえ、と言う。

「あ、専務。
 もしや、なにかお疲れで、もふもふしたいとか?」
と振り返り問うと、

「いや、特に疲れてない」
と言ったあとで、光一は困った顔をし、

「いや、……疲れてきた気がする」
と言い出した。

「疲れよう」

 いや、意味がわかりませんが、と思いながらも、花鈴はもふもふブランケットを取り出し、どうぞ、と光一に手渡した。