ウエディングドレスを着せてやろう

「今の俺たちにはふさわしくないものだと思ったからだ」
と光一は見つめて言ってくるが、花鈴は捨てられそうになった三百万が気になって、つい、そちらを見ていた。

 いや、欲しいわけではないが、庶民としては、むざむざと大金が捨てられたり焼かれたりしたら、もったいないと思ってしまう。

 っていうか、お金捨てて焼かれたりしたら、法律違反では?
と花鈴は思う。

「偽物の気持ちで買ったドレスも、もうこれきりという気持ちで渡した礼の金も、お前の前から消してしまいたいと思ってしまったんだ。

 西辻……、

 花鈴」

 だから、何故、フルネーム?
とまた花鈴は思ってしまった。

「お前ともふもふの毛布に(くる)まれるのは、いつも俺でありたい……

 ……ような気がする」

 い、いやそこは言い切ってくださいっ、と花鈴が思ったとき、内線電話が鳴った。

「せ、専務、お電話ですっ」
と言って、花鈴は逃げた。

 ウエディングドレスも三百万も、箱も上司も置いたまま――。