ウエディングドレスを着せてやろう

「誰も居ませんし。
 そんなつれない雰囲気を(かも)し出されたら、花鈴さんも寂しいですよね」

 ニコニコと人のよさそうな顔の監査役にそんなことを言われ、困る。

 こ、これはもしや、よそよそしくなくしろと言うのですかっ?

 遠慮なく、ラブラブな感じに帰れと言うのですかっ?

 写真撮るときでさえ、側に立ってただけのこの人とっ?

 光一もフリーズしていた。

 もしや……結婚話を疑われて、試されているのだろうかと花鈴は勘繰(かんぐ)る。

 この監査役も実は見合い話を勧めたり、仲人をしたりしたいのかもしれない、と思う花鈴の横で、光一は、

「ありがとうございます」
と覚悟を決めたように言い、花鈴と手をつなごうとした。

 よく考えたら、そこは、

「いやいや、こんなところでは恥ずかしいですよ。
 お気遣いありがとうございます」
と流すのが正解だったし、普通の反応だったのだろうが、なにしろ、二人ともテンパっていた。