ウエディングドレスを着せてやろう

 そのとき、俯き乗っていた花鈴の視界に、光一の靴が入った。

 その美しいフォルムと磨きすぎない感じに手入れされた様子には見覚えがあった。

「あれっ?
 もしかして、これあのときの靴ですか?」

 思わず訊いてしまってから、あっ、馴れ馴れしかったかな、と思ったが、光一は特に気にする様子はなかった。

 むしろ、なにやら誇らしげだった。

「そうだ。
 田畑の手入れがいいから、いつまでも状態を崩さず履いてられるんだ」

「そうなんですか。
 田畑さん、まだお元気なんですね」
とつい、微笑ましく言ってしまったのだが、そこで、光一は妙な顔をした。

「田畑は俺より元気なくらいだが」

「……そうなんですか」

 まあ、専務は日々、お疲れだろうからな、と思いながら、なにか噛み合わないものを感じていた。

 だが、
「田畑さんって――」
と言いかけたとき、扉が開いたので、花鈴は黙った。

 程よく此処まで誰も乗ってこなかったが、地下駐車場には誰か居るかもしれないと思ったからだ。