ウエディングドレスを着せてやろう

「本当に光一とキスしたの?」

「え、いや。
 したっていうか、当たったっていうか……」

 今日はその話題には触れまいとして、二人ともいつも以上に仕事モードに入っていたので、専務の様子がおかしいとも気づかなかったな、と思いながら、そう言うと、安芸は、

「花鈴ちゃん、本当に光一が好きなの?
 ぐいぐい来られて、なんとなく私も好きなのかもと思っただけなんじゃない?」
と言い出す。

 いや、あの人がぐいぐい来るような人だと思いますか?

 ぐいぐい写真を撮ろうとしただけですよ、と思いながら、花鈴は言った。

「いやまあ、実際のところ、私にもまだよくわからないんですよね。

 専務を好きかどうか――。

 でもそういえば、道で出会って。
 足を踏んだので、結婚式の写真を撮れと言われて」

「どうなんだろうね、それ。
 カメと海で出会って。
 助けたから、竜宮城に行けと言われて、おじいさんにさせられるのと似た感じかな」
と安芸は言う。

 さすが専務の親戚。

 例えがよくわからない……と思いながらも、めげずに花鈴は言ってみた。