ウエディングドレスを着せてやろう

 いや、なんの音もしなかったんだが、と思っていると、田畑は、

「その存在を感じさせることなく、ご主人様が快適に過ごせるよう働くのが執事というもの」
と言い出した。

 いや、それはなにか別のモノでは?
と思う光一の側で、田畑は勝手に反省し始める。

「すぐに動きを察せられてしまう私はまだまだ半人前ということですよね」

 執事というにはまだ年若く、少し落ち着かないところもある田畑だが、仕事に対する姿勢は実に真面目だ。

「ふと気づいたら、目の前にホットミルクが、くらいな感じを目指しているのですが。

 動きはともかく、どうにも一言多い、この口が止まりませんで」

 自覚はあったのか……。

 っていうか、いきなり目の前にホットミルクが降って湧いてたら、警戒して飲まないが、と思いながら、光一は田畑を見上げた。

 田畑が言ってくる。

「まあ、そもそもですね。
 行きずりの女子高生に結婚式の写真を撮ろうなんて、らしくもないこと言ったときから、貴方は、なにかに操られていたんですよ。

 その場合のなにかも、恋、あるいは、恋のはじまり、ですけどね」

 腰を浮かして反論しようとしたが、田畑は無言でガラステーブルの上のスマホを指差してきた。