「光一様、お気をつけにならないと、安芸様はなかなか手がお早いですよ」
夜、光一が自室に帰り、窓際の椅子に腰かけた瞬間、田畑がそう言ってきた。
「……お前、今、何処から現れた。
っていうか、安芸さんと西辻の見合いの話、誰がお前にしたんだ?」
いつの間にか真横に立っていた田畑にそう訊いたが、田畑は、いやいやいや、と笑いながら、
「聞いたんですよ、たまたま」
と言う。
たまたま?
何処から?
誰から?
と光一は胡散臭げに田畑を見上げた。
「まあ、すでに、『花鈴ちゃん』『西辻』で呼び方にも差がついておりますしね」
だから、その話も何処から聞いてきた、と思っていたが、
「まあまあまあ。
そこは守秘義務ですので」
と大真面目に田畑は語ってくる。
「我々執事には様々な情報ルートがあるんですよ、光一様。
花鈴様が安芸様にスマホの画面を見せて、二人で楽しく頭を寄せ合うようにして眺めてたらやだな、とか少年のようなことを思っている場合ではございません」
だから、どんな情報網だと思っていると、
「ちなみに、そこのところの話は、貴方の会社に居る、ちょっと産業スパイっぽい人がもらした話です」
とそこだけは教えてくれた。
……誰なんだ、そいつは。



