ウエディングドレスを着せてやろう

「だから、専務の子どもの頃の話してました」

「だから、どんな話だ」

 何度も同じ言葉で問われ、そうですねえ、と花鈴はありがたくゼリーをいただきながら思い出してみた。

「ああそう。
 専務が小さい頃、
『うちのおじいちゃんはピラニアになった』
 っておっしゃってた話とか?」

「……それは、正月なんかに親戚が集まると、必ず出る話だな」
と嫌そうに光一は窓の方を見て呟く。

 祖父がヘルニアになったと言ったのを聞き間違えて、ピラニアになったと言っていたらしい。

「わずか二、三歳の頃の間違いをいつまでも……。
 親戚というのは恐ろしいものだ。

 親戚によるグループ内の権力争いより、俺は昔話をされる方が怖い」
と光一は言い出す。