ウエディングドレスを着せてやろう

 


 それぞれが本を買ったり、眺めたりしたあとで、なんとなくショッピングモールの中をウロウロする。

 もう夕方か。

 意外に早かったな。

 安芸さん気兼ねのいらない人だから、一緒に居て苦痛でないし。

 お互いが覗きたい店を自由に覗いたりして、楽だったからかな。

 でも、そろそろ解散かな?
と思ったとき、安芸が言ってきた。

「お腹空いたね。
 なにか食べて帰ろうか?」

「えっ?」

「新しくできた店で、ちょっとひとりでは入りにくい店があるんだよね~。

 花鈴ちゃん、付き合ってくれる?
 おごるよ」

「あっ、いえ、おごってくださらなくて結構ですっ」

 さっきもアフタヌーンティーセットおごってもらったしな~と思って断ったのだが、安芸は、
「いやいや、今日は僕が」
と言う。

「いえいえ、私が」

「いやいや、僕が」
と気がつけば、どっちが出すか、割り勘か、という話になっていて。

 いつの間にか、行かない、という選択肢は消えていた。