こうして、試行錯誤の末に完成したデザイン画が陽菜さん、更に平賀さんのチェックを経て、決定稿となり、パタンナーさんに渡された。


パタンナーとは、私達デザイナーが作ったデザイン画を型紙に起こすパターンメイキングという作業を行う人のこと。


「なかなか可愛いデザインね。でも、二次元のデザイン画から立体的な型紙に起こせば、当然イメージが変わって来るから。まぁ、そこらへんは任せてちょうだい。」


そう言った渡辺雅子(わたなべまさこ)さんは入社10数年のベテランで、パタンナーさんはこういう熟練の方が多い。陽菜さんは物怖じせず、そんな渡辺さんにあれこれ指示を出したりしているが、私はまだ恐れ多くて


「はい、よろしくお願いします、」


と頭を下げ、一緒に作業もさせてもらうことにした。


「パタンナーとは二人三脚でやって行かなきゃならんからな。いい関係を築いておかないとダメだ。まして、渡辺さんは職人肌だから、ヘソ曲げさせたら大変だぞ。」


平賀さんからは、冗談半分、脅かし半分でそう言われた。確かにこれ以降の仮縫い、サンプル作りと続く作業で、パタンナーさんの力をずっと借りていくことになる。当たり前だけど、自分ひとりで出来ることなんか何もないのだ。


「由夏ちゃんの第1号作品だもんね。いつもにも増して、気合入れてやるから。」


平賀さんから少々脅かされて、私はかなり緊張して渡辺さんとの打ち合わせに臨んだんだけど、実際の渡辺さんは、温和な笑顔をたたえ、最後にはそう言って、私を力付けてくれた。


「はい、ありがとうございます!」


そう答えた私も、ホッと笑顔になっていた。