会議が始まった。12ある球団が、獲得希望選手を順番に挙げて行く。そして、挙げられた選手の名前が重複すると、会場であるホテルに詰め掛けた観客から拍手とどよめきが沸き起こる。


そして、重複した指名選手の行き先を決めるのはなんと、くじ引き。1人の選手の運命、人生を決めるには、あまりにもアナログなこのシステムが、過去にも多くのドラマを生み出して、時に見ている人々の涙を誘い、また憤りの思いを抱かせたりして来た。


かく言う私も、時間の許す限り、毎年テレビの前に座って来た。5年前、私が高校2年生だった時のドラフトでは、憧れの存在だった松本省吾(まつもとしょうご)先輩がなんと8球団から指名を受け、その結末を食い入るように見つめた。


昨年は、その松本先輩の同期の人達が大学4年生になって、ドラフトの対象になった。身近な先輩の行方を、やっぱりドキドキしながら見守った。


だけど、所詮それは野次馬的興味にしかすぎなかったんだと今、改めて実感させられている。


会議は進行し、12球団全ての指名選手の名前が発表された。指名が重複しなかった選手は、その瞬間に自分が入団できる球団が確定する。


指名が重複した選手は、前述した通り、くじで入団チームが決まる。それが12球団の指名選手が全て確定するまで繰り返される。


画面では、悲喜こもごもの人間模様が余すところなく映し出されて行く。意中の選手を引き当て、歓喜の声を上げる球団関係者。内心希望していた球団からの指名を受けられず、複雑な表情を隠せないまま、記者会見する選手・・・。


しかし、今名前を読み上げられた12名の選手は、今年の新人選手のトップと認定された紛れもない「エリート」達だ。


「○○年度ドラ1」。彼らはこれから事ある毎にそう呼ばれ、この肩書が現役時代はもちろん、野球を辞めてからでさえも付いて回る。


それは彼らにとって間違いなく勲章。だけど、彼らのプロ野球選手としての成功を保証する約束手形では、決してない・・・。