その後、私達は途中で買い物を済ますと、私の自宅に。


「お邪魔します。」


鍵を開けて招き入れると、2人はそう言って中に入って来たが、迎える人はいない。


お母さんは今頃聡志の家で、固唾を飲んで、塚原のおばさんとテレビの前に座っているだろうし、お父さんも塚原のおじさんも、仕事を放り出すかのようにして、帰宅の途についているだろう。


今日はこれからプロ野球の新人選手選択会議、通称「ドラフト会議」が開催される。


この会議で指名をされない選手は、プロ野球の世界に足を踏み入れることが出来ない。そしてどんなに優秀な選手でも、自らの意思で、入団するチームを決めることが出来ない。


その理不尽とも言えるシステムが、数々の悲喜劇的なドラマを生み出し、その様子はテレビの地上波で生中継され、多くの視聴者の目を釘付けにする。


見る人にとっては、年に1度のお祭り。しかし、当の選手やその家族にとっては大袈裟ではなく人生を左右する一大イベント。


そんなイベントの当事者の1人に、私の幼なじみであり、恋人であるあいつが、塚原聡志がなった。


私は、そんな恋人の運命を見守るべく、親友2人と共に、テレビの前に座った。