俺は今、一通のメールを読んでいる。小谷さんが仙台を去ってから、数日後に送って来たものだった。


『言い忘れたことがあったんで、メールした。俺がEを退団した理由は、実はもう1つある。仙台に行ってる間、俺は単身赴任だった。家族はうるさくて手の掛かるだけの旦那や親父がいなくて、清々してたかもしれんが、俺はやっぱり寂しかった。久しぶりにこうして、家族と一緒に過ごせる時間は、やっぱり心地よいもんだ。大切なものというのは、普段はなかなか、それに気付かんものだが、離れたり、失ったりすると、その価値が身に沁みてわかるものだ。今の聡志には、この気持ちはよくわかるんじゃないか?男には妙なプライドがあって、なかなか1度口にしたことを訂正したり、取り消したり出来ない生き物なんだが、自分の気持ちに素直になる勇気を持つことも、大切なことだと思うぞ。』


何故、このメールをわざわざ小谷さんが送って来てくれたのか。その意味をキチンと考えていたら、俺はもう少し早く目を覚ますことが出来てたのかもしれない。


面白楽しく、過ごせると思っていた一夜は一転、自分がいかに愚かで、間違っていたかを、突きつけられる時間になった。


俺は誰よりも由夏を愛し、誰よりも由夏のことをわかっているつもりだった。


でも、それはとんでもない自惚れと錯覚だったようだ。俺は由夏のことなんか、由夏の本当の気持ちなんか、何もわかっていなかったんだ。


結果、俺は取り返しのつかないほどの過ちを犯した。


俺があの日、長谷川を呼んだのは、由夏に俺を完全に諦めてもらう為だった。いつまでも、俺に囚われて、自分の本当の夢に向かって、走り出せないでいるあいつを、もう解放してやりたい。解放してやらなくちゃ、その一心だった。


だけど、それは間違いだった。理由も方法も全てが・・・。


「岩武の気持ちを誤解しただけでも最悪なのに、ご丁寧に最悪の上塗りまで、お前はした。なんで長谷川を巻き込んだ?それがいいか、悪いかはともかく、岩武を突き放したあと、長谷川を受け入れる気があったなら、まだいいけど、実際はこれっぽっちもなかったんだろ?それが2人に対して、どんなに残酷なことか、お前は本当にわからなかったのか?大投手になると、女を随分とぞんざいに扱えるようになるんだな。」


「・・・。」


「お前、この落とし前、どう付けるつもりだ?岩武を裏切って、長谷川を傷付けて。彼女達にどうやって詫びるつもりだ!」


神の怒声に、何も言えない俺に、沖田が続く。


「塚原。俺と加奈は、お前にもいろんな心配や迷惑を掛け、気配りもしてもらった。本当なら、今度は俺達がその恩返しをすべきなのかもしれん。俺や加奈が間に入って、岩武さんに連絡を取るのは、簡単かもしれない。だけど、俺はそれじゃ意味ないと思う。」


結局、神と沖田は、そのまま朝一で帰って行った。俺の目を覚まさせる為に、わざわざ仙台まで乗り込んで来てくれた2人の友情に感謝するしかなかった。