翌日、出社した私は、パソコンから過去のYの制服を検索した。


確認出来る限りでは、Yは過去5回、制服のモデルチェンジをしていた。その中には、世界的に著名な女性デザイナーの手によるものもあった。


5枚の写真を並べて見ながら、私が考えていると


「やってるな。」


平賀さんの声がした。


「おはようございます。」


私が挨拶をすると


「こうやって見ると、それぞれの時代背景が、なんとなく読み取れて来て、面白いな。」


と言いながら、隣の席に腰掛ける。


「そうですね。それになんと言っても、仕事中に着る服ですから、あまり奇抜なデザインは当然出来ませんし、色目もある程度限られてしまいますね。もう1つ言えば、制服ですから、10代の人と60代の人が同じ服を着ることになります。余計冒険は出来ませんよね。」


と言う私に


「うん。だが、Yは元々洋品店からスタートしている会社だ。衣料品の担当社員も着用する以上、ファッション性も無視は出来ない。」


と平賀さん。


「あともう1つ、忘れてはならないのは、今回は久しぶりに男性の制服も制定されることだ。このところ、経費を抑える意味もあって、Yではもっぱら女性の制服だけが作られ、男性は自前のスーツ、ワイシャツだったそうだが、今回は社長の『原点に戻る』との方針のもと、男女両方の制服が制定されることになった。だから、両者のバランスも考慮する必要がある。」


「はい。」


こうして様々なディスカッションをしながら、私達は徐々に自分達の考えをまとめて行った。


「お互いのコンセプトは、ある程度共有出来たと思うから、取り急ぎ、第一稿の作成にかかろう。とにかく後ろがタイトだから、いつまでもディスカッションに時間を取られてるわけにはいかない。」


「わかりました。」


私が頷いたのを見て、平賀さんは自席に戻って行く。


「なんか、一時は随分トゲトゲしかったのに、息ピッタリじゃない。」


という冷やかし気味の岡嶋さんの言葉を、笑顔で受け流して、パソコンに向かう。


(やっと平賀さんと一緒に仕事が出来る。最初で最後のコラボレーションだな。)


そんなことを考えながら、私は作業に取り掛かる。