「いいじゃないか。」


「うん、可愛い。私、着てみたいよ。」


「本当?」


いよいよ私のデザインした服の試作品が完成した。工場から届いた品物を事務所で平賀さん、陽菜さん、渡辺さん、そして美優と一緒に手にした。平賀さんからの最初の一言にまずはホッとし、更に美優の言葉に喜びがこみ上げる。


「どう、自分のイメージ通り?」


と聞いて来た陽菜さんに


「はい!」


と大きく頷く私。デザイナーはサンプルを工場に依頼するにあたって、素材はもとより、縫製やプレスの仕方、加工の方法などの要望を事細かに記した仕様書を作成しなければならない。それをもとに、工場は製品を作っていくのだ。


もちろん、そんなことを今の私が全て考え、指示出来るはずもない。渡辺さんや陽菜さんに相談し、指導を受け、精一杯自分の考えを書いた。その結晶が、今私の手にある。


「由夏ちゃんは、しっかり自分の考えや意図がありましたから、頼もしかったし、パタンナーとしてもやりやすかった。いい製品が出来上がったね。」


「とんでもありません。渡辺さんにいろいろ教えていただいたおかげです。」


「少なくてもウチのパタンナーの中で、渡辺さんほど、デザイナーの意図を正確に汲んでくれる人はいないから。あんた、デビュー作で、渡辺さんと組めたなんてホント、ラッキーだったんだよ。」


「はい。」


「珍しく陽菜が私を持ち上げてくれるじゃない。」


「何、言ってるんですか?私だっていつも渡辺さんには感謝してるじゃないですか。」


「そう?あんたの指示がいつも一番厳しいんだけど。」


「それは渡辺さんを信頼してるが故です。」


「フーン、部下ができると、口も達者になるのね。」


そんな会話を交わしながら、私のデビュー作を手に取り、その出来栄えをみんなで改めて確認して行く。


「こっちが色違い?」


「うん。」


「両方いいけど、私はこっちのピンク系の方が好きかな。じゃ、私はこちらをお買い上げということで。」


「美優、ありがとう。」


同期の友情が嬉しい。


「じゃ、売り上げも1枚確保出来たことで、ゴーでよろしいですか?」


そうお伺いを立てた陽菜さんに


「ああ。岩武、お疲れさん。」


と言って、平賀さんは温和な笑顔を私にくれた。


「ありがとうございます。」


思わず私は一礼していた。