純一は温子のスーツ姿に惚れ惚れした。

かっこいい!

やっぱいいよな。

仕事帰りに会うってなかなかいいもんだ。

と密かにほくそ笑んだ。

小ぶりなレストランに入った。

適度な暗さとバー兼用の落ち着いた調度品に

メニューも数種類のみで悩まなくていい。

「温子さん、何にしますか?」

「私、ビーフシチューとグラスワインでいいわ。」

「それだけですか?」

「後でまたオーダーするから。」

「じゃ、僕はミニパエリアとスペアリブにします。」

「飲み物は?」

「温子さんと同じもので。」

お互いにジャケットを脱いで

椅子の背もたれに掛けた。

グラスに注がれた赤ワインがきた。

「お疲れ様です。」

と軽く乾杯した。

「平日の夜ってこんな風に過ごせるんですね。」

純一の言葉に温子はただただ嬉しい気持ちでいられた。

「このままずっと一緒にいたい。」

素直にポロリと言葉が出た。

温子は純一と見つめ合った。

「僕もそう思います。」

二人で微笑み合った。

時々とりとめのない会話をしながら静かに食事をした。

求め合えることに幸せを感じた。

温子はこの急展開に自分でも驚いた。

つい二週間前のお見合いから

どうしてこうなったのか考える必要もないほど

純一に夢中になってしまった。

元々は純一からのアプローチであったはず。

理由もなく好きになれる相手がいることに不思議な感覚もあった。