尋常でない見合いを経験した。

早川家の次男、優一は女の扱いに慣れきっていて

恋愛無しの即日婚でもノープロブレムだ。

なぜなら、

長男と三男が見合い中の洋間に現れてこうのたまったのだ。

「温子さん、俺たち三人が君の夫に立候補する。誰を選ぼうと君の自由だ。良ければ交替制でも構わない。」

銀製のティーポットから立ち昇るアッサム紅茶の強い芳香が洋間に漂った。

アフタヌーンティーの用意をする家政婦を含め

その場にいた全員が聞き耳を立てたまま身じろぎせず

今の言葉は何かの間違いだと

それぞれが顔に愛想笑いを浮かべるか

頬を引きつらせるか

口を半開きにするか

眉をひそめるか

その全部がごちゃまぜになるかした。

早川の両親はとんでもない息子たちの

とんでもない非常識な宣告に

この場から消え去りたいという思いで

顔面蒼白のまま固まった。

私は和装で足を組めないことにイライラし

彼らのどうでもいい提案は頭の隅っこに押しのけ

贅沢なミルクティーを飲み損ねはしないかと気にした。

お坊ちゃま達の素行は幼い頃から心得ているであろう

心臓の強い家政婦が最初に我に返って

ポットからカップへ紅茶を注ぎ始めた。

温められたミルクが加えられるのを私は目の端で確認しホッとした。

まずは喉を潤すべきだ。