翌朝、

温子はいつものようにオフィスで声を大にしていた。

「あと何件かしら?」

ランチ・タイムが迫っていた。

チーム全員が祝日明けの処理数に悲鳴を上げ

朝から全力でキーボードを叩いてさばく。

「アッコ先輩、まだ完了できません。」

「チーフ、私もまだです。」

あちこちのブースから声が上がった。

「仕方ないわ。今日は延長しましょう、皆。」

「はいっ!」

日本の祝日は国外では無関係である。

特に金融系は国内のカレンダーに忠実でも

海の向こうでは取引先は通常通りの動きとなる。

予想はしていた。

デスクに戻り午後のスケジュールを調整した。

チーム内の負担を軽減する分

自分が仕事量をかぶることになるが

極力残業は申請したくない。

前任の契約社員の欠員補充が確定しない期間は

あとどのくらいかを気にした。

終業時刻にチーム全員を帰してから

温子は一人デスクに残った。

小一時間でバックアップを完了できた。

「やれやれ、明日は定時で帰りたい。」

スマホを見ると

早川の三男坊からメールが入っていた。

何々?

「温子様、お疲れ様です。」と始まり

土曜日の待ち合わせ場所が記され

「ご多忙のところ体調にはお気をつけてください。」という文末だ。

悪い気はしなかった。

自分は年下に弱いタイプだと気づき

そうだったのかと思い

特別悲嘆する理由もないと無邪気な考えでいた。