夕刻に軽くジョギングした温子は

家に戻ってからシャワーを浴びた。

キッチンでリンゴジュースを飲んでいたら

まだ和服のままでいる母が憂鬱そうな声で言った。

「温子、ご飯はレトルトで適当に食べてちょうだい。ママは寝るから。」

「パパは?」

「パパは駅前のラーメン屋へ行ったわよ。じゃ、おやすみ。」

「私もラーメン食べたかった。」

すでにシャワーを浴びていたので

これからまた駅前まで出るのはためらった。

「しゃーない、カレーでも食べるかな。」

冷凍室を見たら肝心のご飯がなかった。

ガサガサと手でかき分けるとグラタンがあった。

「これでいいわ。」

レンジで温める間に飲みきりサイズのワインの小瓶を開けて

トレイに皿とフォークをのせ

ダイニングテーブルに運んだ。

「あの連中、典型的なわがまま御曹司トリオね。話にならないわ。」

昼間の見合い相手を思い浮かべるだけで気が滅入った。

ピピッとレンジが鳴った。

「熱っ!」

グラタンが煮たぎっていてレンジ内の蒸気がモオモオだ。

しかも紙皿ときてる。

「こりゃ、舌が火傷しちゃうな。」

湯気立ったグラタンをフォークでかき混ぜた。

「冷めるのを待ってたら、ワインがなくなっちゃう。」

一人ブツブツと言いながら

生乾きの髪にブラシをかけた。