「どうした、天野?」


「な、なんでもない。
なんでもないんだけどっ!」


きゅっと唇をかんで、
一ノ瀬くんを見上げる。


「あの、
この前も思ったんだけど、

一ノ瀬くん、
ちょ、ちょっと…
距離感が近いような。

一ノ瀬くんって
帰国子女とか、なの?」


それを聞いた一ノ瀬くんは、
一瞬、目を丸くして
肩を震わせて笑いはじめた。


んん?

どうしたんだろう?


キョトンと
一ノ瀬くんをのぞきこむと。


「天野が小さすぎて、
近づかないとよく見えないんだよ」


一ノ瀬くんが
楽しそうに笑いながら答えた。


「ウ、ウソだっ!」


「うん、ウソ。
じゃ、天野、気を付けて帰れよ。

一緒に居残りできて、楽しかった」



そう言って
甘く笑った一ノ瀬くんの笑顔が、
オレンジ色の夕陽に溶けて

心臓が大きく鳴った。