一ノ瀬くんとは中学のときからの知り合いで、
同じクラスで出席番号も近いのだけど、

一ノ瀬くんとの会話(?)は
いつもこんな感じ。


「羽衣ちゃん、後輩が来てるんだけど
ちょっといい?」


休み時間に
叶奈(かな)ちゃんに呼ばれて
廊下にでてみると、

新入生らしき女の子が叶奈ちゃんの背中から
ひょっこりと顔を出す。

手渡された小さなメモに視線を落とすと、
宛名は私ではなく一ノ瀬くん。


「この子、うちの部の後輩でさ。

一ノ瀬くんの大ファン。

悪いんだけど、このメモ、
一ノ瀬くんに渡してもらってもいいかな? 

連絡先とIDが書いてあるって」


「すみませんっ、お願いします!」


深々と頭を下げた
可愛い新入生が、
小さなメモを差し出した。


「わかった、渡しておくね!」


「ごめんね、こんなこと
羽衣にしか頼めなくってさ」


「大丈夫だよ、任されたっ!」


手渡されたメモを受け取り、

叶奈ちゃんの後輩が
教室を去ったのを見届けて、

自分の席にもどった。