一ノ瀬くんの隣に座っていると、
心が緩んで
ホッと温かい気持ちになるのに
どこか切なくて苦しい感覚に包まれる。


でもどうしてなのか、
その理由がわからない。


「ねえ、昨日約束したじゃん!」


「ごめん、ごめん、すっかり忘れてた」


廊下に響く、
誰かの大きな話し声に動きを止める。


約束……?


そういえば、
一ノ瀬くんが言ってた約束って
なんのことだろう?


あのときは
まだ全身の痛みもひどくて
落ち着いて考えることが出来なかった。


それにお見舞いが禁止されていたのに
わざわざ病院まで来てくれたなんて。

なにか大切な話が
あったのかもしれない。


一ノ瀬くんなら、
なにか知ってるのかな。



部活のために体育館へと向かう一ノ瀬くんは
きっとこの廊下を通るはず。


そう思い、このまま廊下で
一ノ瀬くんを待つことにした。