貪欲に愛を欲す

気づいたら、麗の鎖骨に俺は噛み付いていて。

そんな俺にも、嬉しそうに笑う麗。


生まれた時から、人のことを信じられなかった。物心ついた時には、人のどす黒い部分が見えて、その全てを嫌悪してきた。

「若、お友達など要りませんよ。」
「若、大切なものとは利益のあるものです」

両手で数えられる歳の俺に、
頭のイカれた組員が、呪文のように唱えるそれら。

「若、強くなってください。」

そして、俺を縛り付けた言葉。


うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ。
俺はもう、強いんだ。
俺は、強いんだ。
弱いものは、弱者は、敗者だから。

そしてある日、プツリと音がして
何も感じなくなった。

悲しくもない。辛くもない。
頭のイカれた組員も、
俺を縛り付ける上も、
全部全部くだらねぇ。

…そんな俺が、“あれ”から15年経ってから、
人に弱さを見せるようになったとは。

しかも、たったひとりの女に。


俺の上に跨り、嬉しそうに微笑んでいる彼女は、出会った瞬間から俺の全てで。

俺が15年に渡り、閉じていたドアを、
急に開けられたような感じだ。


…でも、悪くねぇ。