鷹人side

「怖い」極道の自分が、そんなことを思ったのは何年ぶりだろう。

きっと、“あの時”以来だ。

そして、それを人に言うなんて…
きっと、生まれて初めてだと思う。

こんな気持ちを引き出させるのは、
麗だから。

けれど、俺も一応プライドはある訳で。
情けねぇ姿を見せたと、
全てを言い終わったあとに後悔した。

そして、震える声で、
泣かないでくれと懇願するほど…
自分を怖がられることに恐怖した。

けれど、麗の答えは想像を超えるもので。

俺のこの狂気が嬉しいと、
息を飲むくらい美しい顔で微笑んだ。

その目は、今にも喰われてしまいそうなほど深くて…

俺はもう、堕ちる所まで堕ちているらしい。

すると、「鷹人?もっと、もっと。私に、堕ちて…?」
と続けた。

俺はもう、堕ちてるよ。
そう言いたかったが、彼女のその美しく強い姿を見ると、まだまだ俺は足りないのだと思った。

そして続けた、麗の言葉。
麗が俺から離れる時は、俺が捨てた時。

何があっても、俺が麗を捨てることは無い。

…つまり、離れることは有り得ねぇってことだ。


ニヤリと口角が上がる。
ぞくぞくと、俺の狂気が震える。