やっぱり、長年の傷、というか。

直ぐに仲良くすることは、難しいのかもしれない。現に今も、少し身体が震えている。

…けれど、仲良くなる、第一歩として。


目の前に差し出された手を掴もうと、

私も手を差し出して、握り返す…


ことは出来なかった。

鷹人が、私の腕を掴み、
めちゃくちゃ低い声で、
「目の前で浮気とはいい度胸だな」

と、声に出したから。

「ふふっ、ごめんね?」
機嫌の悪い鷹人に素直に謝る。

「あ゙?認めんのか?」

うーん、そういう事じゃないんだけどなぁ。

何だか一層機嫌の悪くなった鷹人に、頭を悩ませるも、
明らかな独占欲に、私の気分は上昇する。

「いやいやいや…
ちょっとの握手でしょ?それで、浮気は…」

水谷さんのフォロー(?)にも、
「死ね」だけ返す鷹人。

「え、酷くない?てか、鷹人の浮気って何処から?」

そんな水谷さんに、再び「死ね」とだけ。

それからも、質問を繰り返していたけれど、もはや、死ねとしか言わなくなった鷹人に呆れたように、テーブルの方に行った。


緩む頬のまま、
「ふふっ、私…頑張った?」

と聞くと、若干イラついたように。けれど、深く頷いて、頭を撫でてくれた。