貪欲に愛を欲す

「ゆっくりでいい」
そういって私の頭を撫でてくれた鷹人。

あぁ、もう、どうして…

鷹人の行動1つでも言葉1つでも、
私にとっては特別なものに変わってしまう。


鷹人が部屋を出ていき、
愁が持ってきて、鷹人が横に置いてくれた紙袋に入った服に着替える。

中にあったのは、黒のワンピース。
動くと裾がヒラヒラと揺れる可愛い形だった。

直ぐに着替え、ちょこちょこと周りを歩く。

物欲は皆無。お洒落にも余り興味は無かった。

けれど、鷹人に見られると思うと、
少しでも可愛いくなりたいと思ってしまう。

「ふふっ、恋は盲目ってこういうこと?」

まだ不安は拭えない。
けれど、やはり、鷹人のくれた温かさは永遠のような気がして…

鷹人に、ハマってしまう。


ワンピースと一緒に紙袋に入っていた
ゴムやピン等などの中から、ゴムを1つ取り出し
長い黒髪を耳の上で結ぶ。

前髪を手ぐしで整え、部屋を出た。


リビングに入る。
「お待たせ…しました。」

途端に、鷹人と愁が此方を見て…
鷹人が目を見開いたような気がする。

「麗、来い。」
鷹人の声に、小走りで向かい、
先程と同じ位置に座り、今度は腰に手を回して
鷹人のミントの匂いを吸う。