貪欲に愛を欲す

「麗、か。」

名前を口にすると、はにかむ様なぎこちない笑顔を浮かべた彼女。

初めて見た笑顔に、胸が高鳴る。

それと同時に、この顔は俺だけのものだと
自分の中の狂気が顔を出す。


そんな時、親父の言葉を思い出した。
「いいか。惚れた女を見つけたら、そいつが何を求めているのか考えろ。
先ずは、心を手に入れることだ。」

何を求めているのか。
人の心を読む事は小さな時から長けている。

…でも、惚れた女を前にすると、
何も分からなくなってしまうらしい。


「…麗、何が欲しい?」
聞くが早いな、と思い、麗に声をかけると
此方を見上げながら、首を傾げる麗。

…上目遣いに、これは、…やべぇな。

内心ざわめく心を見透かされないように、
「なんでも言え」と言葉を続ける。


少しずつ、だが、麗の瞳が漆黒に染る。

“絶望”“苦しみ”、、そんなありふれた物ではない。

例えるなら、“無”

まるで、この世界には俺と麗しかいないような気持ちになる。
…この目から、逃げることは出来ない。


…お前は、どれだけ俺を夢中にさせたら気が済むんだ。

俺の狂気が、俺の狂愛が暴れ出す。


もっと、もっと。
俺にだけ関心を持ち、俺だけを見ろ。
俺だけを愛せ。

俺以外の全てに、絶望しろ。