貪欲に愛を欲す

頭を捻ると、耳に入ってきた
弱々しい、震えた声。

「…別に、…違いま、す…
私、こーいぅ、の慣れてるん、で…」


俺の惹かれた、漆黒の瞳から
涙を一筋流した女。

今までは、女の涙ほど面倒なものは無かった。計算されたような演技に吐き気がするほど嫌悪していた。


けど、此奴の涙は…
他のやつなんかとは、違う。

胸が締め付けられるような、
わしずかみにされたような痛み。

…堕ちた、な。


「泣く、な…」
声を出してみると、震えた自分の声。


本能のまま、彼女に近ずき、
彼女の頬に流れる涙を親指で掬う。

その、頬の柔らかさに。
その、涙の温かさに。

胸が、震える。

此奴は、俺のものだと、血が騒ぐ。

彼女をもっと感じたくて、
彼女を起き上がらせて、抱きしめる。

自分よりも一回りも小さな身体。
細く華奢な身体だが、女性特有の柔らかさがあり、彼女から匂う甘い匂いに欲情する。


彼女から聞いた、美作麗という名前。

麗、か。


女の名前なんてろくに覚えれない自分。
けれど、麗の名前だけは、共鳴するように頭の中で響く。