貪欲に愛を欲す

イラつきに任せて冷たい声で
上堂の女かと聞くと、身体を震わせながらも首を横に振り、マサの女だと間違えられて拉致られたという。

つい、舌打ちが零れる。

マサを後で絞めるか…
と考えながらも、収まることの無いイラつき。極道という職業柄、殺意を覚えることも実際手を出したこともある。


…が、このイラつきは知らない。

イラつき、ムカムカと言った方が当てはまるこの感情。意味の分からない感情だが、
気分は悪くない。

といっても、イラつくのはイラつく。

「…それにしても、抵抗無しのように見えるんだが…慣れてんのか?商売か?」

この気持ちは、きっと愛なんだと思う。
俺がずっと探していた唯一の女が
目の前の、この、美しい女。

だから、俺の女に他の男が触れたと思うと
狂いそうで、目も鋭くなる。


彼女が、目を伏せた瞬間、
「っ、若!すいやせんっ俺のせいです!」
マサが来た。

マサが慌てた様子で
事情を説明する。
マサの様子を見ると本当なんだろう。
…言いたいことは、分かる。

マサが殺されそうだったから
自分に意識を向けて、マサを助けたのだろう

…つっても、、
普通、自分の身を呈してまで他人を、しかも極道の人間を助けるか?