貪欲に愛を欲す

ただ、震えを増す身体を
強い目をしながら起こそうとする女。

此奴は、本当はめちゃくちゃ弱いんだ。
けれど…こんなにも、強い。

途端に、俺が守りたい。
俺にだけ弱さを見せて欲しいと思う。


「いい。」

初めての自分の気持ちに口角が上がり、
出来るだけ優しい声を出そうと努めると
ほっとしたような顔をする女。

…たったそれだけでも、
こんなにも俺の心を惑わす…

更に近づくと、強く絡み合う目。
そして、執着の跡のついた身体。

きっと、上堂が着けたのだろう。
むしゃくしゃする。こんなにも腹立たしいのは、何時ぶりだろうか。


ふぅ、と自分を落ち着かせて
自分の着ていた丈の長いコートを被せる。

ペコりと、小さく頭を下げる女。

それだけでも、心が暖かくなる。

ただ、コートを掛けさせる時に気づいた。

無理やりされたとした時、
抵抗する時の跡がないこと。

抵抗していたとするならば、
身体の何処かが赤くなっていたり、
爪で引っかかれた跡があるのが普通だが、
目の前の女にはそれがなかった。


…まさか、同意か?
そう思うだけで、イライラする。