貪欲に愛を欲す

はぁ、っと息を吐いて
先程から気になって仕方の無い、
ベッドに横たわる女に視線を寄越す。

身体の震えている女。
身体は震えているのに、それとは裏腹に
俺を射抜く強い目。
“綺麗”“美しい”それらは全てこの女の為にあるのではないだろうかと思ってしまう程の
圧巻の容姿。

…何より、気の強い女に見えるのに、
今すぐにでも崩れ落ちて泣きそうな程、弱く見える目の前の女に、
今まででは有り得ないほど、胸が震えた。


そして、思い出した親父の言葉。
「唯一の女がお前を救ってくれる。」

この、俺が。女嫌いな俺が。
性欲処理としてしか見れない俺が。
物欲のない、俺が。
目の前の初めて見た女が、
何をしてでも欲しいと思った。


…見惚れて、動けなかった…
どうしたんだと思いながらも、
目の前の女に歩みを進める。

更に震える身体。
俺が怖いんだろう。そりゃそうだ。
いきなり現れた男が、目の前の男を吹っ飛ばしたのだから。仕方がない。

分かってはいても、震えないでくれ…
怖がらないでくれ…と懇願している
自分がいる。