10喋る愁に、1返す麗。

だが楽しそうな麗。
ちっ、やっぱ此奴を潰すか?

そんな俺の視線に気づいたのか、
「あは、あはは~」と適当な笑いを零す愁。

“消えろ”と、麗にはバレないように口パクで伝える。

「…はぁ、俺、仕事しなきゃだから戻るねぇ?」
諦めたように溜息をつき、ヒラヒラと手を振る愁。

「うん。バイバイ」

「え、ちょっと素っ気なさ過ぎない!?」

「バイバイ」

「麗ちゃーん?」

ふっ、所詮あしらわれている愁を鼻で笑う。
…だが、うぜぇな。

「愁?」
つい出た声が思いのほか低く、我ながら自分の独占欲に内心乾いた笑いを零す。

「…まっ、またね!」

ドタドタと帰っていった愁。
…やっと帰ったか…

はぁ、とソファの背もたれにもたれると、
「ふふっ」と聞こえてきた麗の可愛らしい笑い声。

ニヤつく顔を必死で隠し、
麗の体を腕の中に包み込む。

「どうした?」
優しい声を出そうと思ったら出たのはデレデレの声。

「ふふ、さっきの鷹人、どれくらい怖い顔してたのかなぁって思って。」

さっき…、麗の後ろから視線を飛ばしたはずだが…

「バレてないと思った?
愁、私から目線が外れたと思ったら顔が強ばったもの。」