愁side

馬鹿な餓鬼達の倉庫を出て、
本家から呼び出した車の後部座席にもたれかかっている。

もう一度チャンスをやると言ったはいいものの、鷹人はもう替えの…マサに話をしているだろう。

ここで俺がもう一度だけ彼奴らにチャンスをやれないかと話したら
麗ちゃんを傷つけるかも知れないし、
何より主の怒りを買うだろう。

んんどうするもんかねぇ?

「プルルルルプルルルル」

俺の思考を止めた、仕事用のスマホからかかってきた電話。

表示画面を見て、口角を上げる。

「そこら辺に車停めてー?」

へぇと返事をした組員。
スピードが徐々に遅くなり、広めの道幅に停まる。

車から出て、鳴り止まないスマホを取り出す。

余談だけど、俺はスマホ3台持ちなんだよねぇ。私用と仕事用と女の子用。

仕事用に入っているのは組員始め俺の手足達だけれど、中には何人か女の子もいるんだよね。

身体で金稼いでもらってる女の子とか、
情報仕入れされる女の子とか。

そしてこの子は、

「ピッ、もしもし?すぐ出れなくてごめんね?瞳。」

俺の、今1番大事なお仕事相手。

「…おっそい、愁。」

第一声目が不機嫌な声ってねぇ…
麗ちゃんじゃない限り可愛くないねぇ。

まぁ、その不機嫌な声の中に
少しばかりの不安があるのが笑うよね。