貪欲に愛を欲す

教室に入ると、もう席に着いている百合の姿が。

百合、と言おうとした時、
「美作さん、おはよ。」

知らない人から話しかけられた。

…多分、黒翁の人。
昨日の朝に会った時、居た気がする。

「…おはようございます。」
小さな声で答える。

鷹人と愁、神代さん以外の男の人は苦手。
苦手というか…嫌。
例えこの人たちが、私の護衛をしてくれるとか、鷹人の後輩だとかは関係ない。

ぺこりと頭を下げて、早足で自分の席に。

「百合、おはよう。」

今度こそ、百合に挨拶をすると、
いきなり抱き締められた身体。

百合の、甘い匂いがする。

「麗っ、」
…百合は優しい子だ。

いきなり震え出して、自分を置いて帰った女のことを想ってくれている。

ファンデーションで、幾分隠されてはいるけれど、近くで見ると、目の下には隈がある。

「百合、昨日はごめんね。」

心配かけて…と続けると、
ぶんぶん首を横に振る百合。

「…うち、麗が苦しんでんのに何も出来んかった。ごめんっ。」
百合には、過去のことを話している。
…勿論、瞳のことも。

きっと、昨日の放課後から、私を心配してくれているのだろう。

心配してくれている百合とは裏腹に、
私の心は暖かくなっていた。