貪欲に愛を欲す

気持ち悪い声を出すな。

そう言いたいが、今は泳がせておくべきだ。

腕の中に居る麗の匂いを精一杯嗅ぎ、
何とか気持ちを落ち着かせる。

「申し訳あり…」
「愁」

貼り付けた笑みを浮かべ、女を帰らせようとしている愁を呼び止める。

そして耳元で、
「グズグズに壊せ。」
そう、告げる。

一瞬驚いた顔をした愁は、
「りょうかーい」と笑顔を浮かべる。

俺が麗を抱き直すのと同時に、
愁があのクソ女を慰めに行く。


愁があの女の肩に手を置いたのを見て、
俺は元来た道を歩く。

「若。」
どうやら、銀夜も来ていたらしい。

「気を失っているだけだ。
俺の家に行け。」

俺の言葉に「へい」と返事をした銀夜は、
俺の後ろに回る。


後ろで黒翁が何か言っているのは分かるが、
もう麗しか見えていない俺の耳には入らない。

俺の腕の中にいる麗。
相変わらず綺麗な顔をしているが、
どこかキツそうだ。

少し力を入れたら折れそうなほど、
華奢な身体をした麗。

この細い身体で、計り知れぬ絶望を背負ってきたんだ。

愛おしい体にキスを落とす。

「麗。お前を傷つける奴は俺が消してやる。だからお前は…俺の事だけ考えてろ。」