萌花ちゃんだって言いづらいだろう。


そう思い、泣き出しそうな弟の背中をポンポンと軽く叩いた。


小さいながらも何か察したのか、紅葉もそれ以上は口を開かない。


しばらく沈黙が流れた。



しかし、その沈黙を破ったのは不思議そうな表情の萌花ちゃんで。


「…えっと、さっきから楓先輩も紅葉くんもなんか勘違いしてるみたいですけど、、私、彼氏いないですよ…ていうか、今までいたことないんで…自分で言ってて悲しいですけど」


と、苦笑い気味にそう言いはなった。



…は?マジで?


そんな彼女に今度は俺が驚かされる。


じゃあ、さっきの電話の男は一体…。


悶々と考え込んでいる俺に対し、


「ほんとに!?よかった~」


と、素直に喜ぶ紅葉。


さきほどまでの涙はどこへやら。すでに満面の笑みを浮かべている。